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バイオベンチャーでの3年間が教えてくれた6つの価値

26歳からアラサーになるまでの20代後半の貴重な3年間、私はとあるバイオベンチャーで医薬品の開発をしてきました。

その企業での経験は、私の技術者キャリアの基盤を築いており、その後の転職やキャリアチェンジにおいても支えてくれました。

私は、その企業が抱く目標と大きな夢に共感し、製薬業界の未経験者として、大手企業を辞め、飛び込みました。そこで出会った当時の仲間や未経験の私を厳しくも優しく指導してくれた当時の上司には今も心から感謝しています。

この記事は当時を振り返り、私の経験をお伝えしたいと思います。皆様のキャリアを考えるきっかけになれば幸いです。

大手企業からバイオベンチャーへ

ベンチャー企業やスタートアップへの転職は、キャリアや経験を鍛えるという点では魅力的な選択肢の一つです。ただし、それを行動に移すには相当な覚悟が必要です。

そもそも大手企業は、年収も相対的に高く、教育システムもそれなりにしっかりしているので大学を出たばかりの20代の若手社員にとって働きやすい環境だと思います。それ以外にも、住宅手当や福利厚生も充実しており、残業もシステムで管理されているため、仕事とプライベートを調和させやすいです。

当時の私も、週に一度の「ノー残業デー」を楽しんだり、同期たちとフットサルやスノボを楽しむなど、余裕のある生活を送っていました。

しかし、バイオベンチャーへの転職を機に、生活は劇的に変化しました。

自分の時間というものはできる限り会社のために捧げ、プライベートも犠牲にし、仕事のピーク時には残業や休日出勤が頻繁に発生しました。他の社員も同じで、皆が自分を犠牲にし、会社のために働いていたと思います。自分一人ではなくて、周りも皆同じように辛い思いをしているからこそ、運命共同体のように、また家族のように、会社全体で結束力があったように思います。

ベンチャーは大手企業のように十分な人を雇うことが難しいです。簡単に言えば、社員数という分母に対して業務量という分母がとてつもなく大きい。そうなると、一人当たりの業務量も増えて、少ない人数でこなしていくには労働時間を延ばすしかないというカラクリです。

大手企業の場合、人が不足していれば、他部署からの異動や中途採用でとにかく集めますが、ベンチャー企業にとって人の増加(人件費の増加)は死活問題で、特に規制で縛られていて簡単に製品を売ることが許されないバイオベンチャーにとっては無理な話です。

<注意>
ベンチャーの中でも、バイオベンチャーは性質がやや異なります。たとえば、ITベンチャーの場合、自社のサービスを開発し、ローンチすれば売上が上がる可能性があります。しかし、バイオベンチャーの場合は「医薬品」や「再生医療(細胞)」の開発をターゲットとしており、ここには厳格で厳しい「法規制」が存在します。開発が順調に進んだとしても、自由に販売することはできません。厚生労働大臣の承認を受けなければ販売できず、販売できなければ売上も得られません。

ベンチャー企業やスタートアップにおいて、1人1人のメンバーは非常に重要な存在です。

入社年や経験に関係なく、早いうちから最大限の貢献が期待されます。新人であることを理由に「私、新人なんで・・・」と言う余裕はありません。

バイオベンチャーでの経験から得た6つの価値

それでは、実際に在籍して感じた6つの価値をまとめてみます。

①適応力とスピード感

私の場合、フットワークが軽くなり、どんな状況にも適応できるようになりました。

退職してから気づくことですが、人間というものは環境に慣れる生き物であり、一度ベンチャー企業の環境で主体的に仕事に取り組む資質が養われると、将来、どこに転職しても、その適応力が自然に発揮され、フットワークが他の人よりも軽くなります。

そうなったのにはベンチャー企業ならではの理由があります。

ベンチャー企業というのは意思決定が迅速です。

大手企業の場合、意思決定者の判断を受けるのに、何段階もの会議体があり、無駄に審議を重ねたあとで意思決定されますが、ベンチャーはその段階を飛び越え、いきなり意思決定者を含めて審議します。

バイオベンチャーにいた当時は、「会社(経営)が動いている感覚」というものをダイナミックに感じることができました。その結果、自分がしている仕事がなぜ会社にとって必要か、他の部門との関わり方や、会社全体にどのような影響を与えているのか、という本質を理解しやすかったと思います。

しかし、スピード感のある企業というのは欠点もあります。社内が混乱し、予期せぬ変更が頻繁に発生する可能性があることを示唆します。

②若手にもチャンスが巡ってくる

大企業での仕事というのは、組織的でタスクが詳細に分かれいて、各人の役割が明確に決められています。そのため、大企業にいると、自分の仕事領域以外の業務を行う機会はごく限られています。

一方、ベンチャー企業は、私がいたバイオベンチャーも同じですが、組織がコンパクトで社員数も限られているため、そこでは少ない人数で多くの仕事をこなします。ベンチャー企業でも各人の役割といううものは存在しますが、その境界線はぼんやりしており、仕事は通常の縦割りよりも横断的なものが多い傾向にあります。

その結果、一人ひとりの業務幅が広く、仕事には明確な区切りがなく、部門をまたいで協力が求められます。

また、ベンチャー企業では社内でノウハウが不足しているなかで、新しいプロジェクトに挑戦する機会も多く、こうしたプロジェクトではさまざまな課題に立ち向かうことになります。しかし、課題が多い分、これらの問題解決のプロセスは将来的に非常に貴重な経験となります。

私の経験を話すと、バイオベンチャーに在籍中、試験の実施のためアメリカへの出張を指示され、2週間ほど滞在する機会がありました。こういったチャンスを当時未経験だった私でも掴むことが出来たのも、ベンチャー企業で働く魅力の一つであり、大手企業ではなかなか得られないものだと思います。

年齢や経験に左右されない実力社会

大手企業では、出世において年功序列が一般的です。かつてよりも薄れてきたとはいえ、大手企業では年功序列が色濃く残っているとところが多いです。

しかし、この古典的なアプローチは、合理的ではあるのですが、仕事ができる若手社員にとっては魅力に欠け、仕事が単調で成長の機会が限られることがあります。さらに、この制度に気づかず、自身の成長の機会を失うこともあるでしょう。それだけ、20代半ばから後半というのは成長が著しい時期です。この時期にどこの環境に身を置くかどうかは、30代のキャリアに必ず影響します。

一方、ベンチャー企業は、そもそもが限られた人員で仕事をこなす必要があるため、年齢に関係なく実力を評価する文化が根付いています。若い社員であっても、実力があれば上級の仕事を担当し、実力に見合った評価を受けることができます。

私が入社したバイオベンチャーでは、チームをまとめ上げる上司(課長クラス)は30代前半の方でした。大手企業では若手から中堅くらいの世代でありながら管理職のポジションに就いており、40代や50代の経験豊富な社員を指導していました。その方が特別かもしれませんが、非常に優れたビジネスセンスを持つ方で、一緒に仕事をすることで多くのことを学ぶことが出来ました。

やはり、ベンチャー企業のような文化のもとでは、実力が正当に評価され、年齢に左右されない実力社会が形成されます。社歴も多少影響しますが、若手社員にとっては、実力次第で大手企業にいては経験できないことを経験できると思います。

④先端技術が身につく

ベンチャー企業では、バイオベンチャーを含め、未知の分野での新規事業が多く展開されています。大学発のベンチャー企業もその一例です。

こうした企業では、世界中でまだ誰も達成していない目標を掲げ、その実現に挑戦します。そのため、仕事は非常に明確なストーリーを持ち、分かりやすく、社会への貢献性が高いものが多いです。

例えば、世界初の画期的な治療法を開発するプロジェクトがあったとしたら、それも一例だと思います。こうしたプロジェクトは成功するかもしれませんが、失敗するかもしれません。ただし、結果に関係なく、そのプロセスそのものが将来のキャリアにおいて非常に貴重な財産となり、その後の進むべき道でサポートしてくれるはずです。

さらに、先端技術やそのノウハウを習得する機会が多いため、将来の転職においても大きな優位性を持つと思います。ベンチャー企業での経験は、自身のキャリアの価値を高めていきます。

⑤新規事業の立ち上げ経験が得られる

ベンチャー企業では、特にバイオベンチャーを含め、未知の分野での新規事業が多く展開されています。大学発のベンチャー企業もその一例です。

こうした企業では、世界中でまだ誰も達成していない目標を掲げ、その実現に挑戦します。そのため、仕事は非常に明確なストーリーを持ち、社会への貢献性が高いものが多いです。

例えば、世界初の画期的な治療法を開発するプロジェクトに関与することができるでしょう。こうしたプロジェクトでの成功体験や失敗体験は、将来のキャリアにおいて非常に貴重な財産となり、自身の進むべき道を明確にする一助となるでしょう。

さらに、先端技術やそのノウハウを習得する機会が多いため、将来の転職においても大きな優位性を持つことができます。

仮にベンチャー企業の経営が行き詰まったとしても、その経験というのは他社でも通用するため、転職で高い評価を受けると思います。

⑥問題・課題に対する対応力や解決力が身につく

ベンチャー企業は、大手企業のような歴史や豊富な経験を持っていません。

そのため、ベンチャー企業で働く場合、社内でまだ経験のない問題や課題に直面することがよくあります。大企業では、こうした問題に対し、既にある程度は解決策やノウハウが蓄積されており、経験豊富なメンバーが対処することが一般的ですが、ベンチャー企業ではそれがほとんどありません。

そのため、ベンチャー企業での仕事は、自分たちで問題の解決策を考え出し、実行に移す必要があります。このプロセスを仕事の醍醐味であると捉え、積極的に取り組むことができる人が、ベンチャー企業には向いていると思います。

問題解決の過程で得られる経験は非常に貴重で、問題や課題に対処するスキルや解決能力を高める機会となります。

こうした経験を通じて、問題や課題に対して冷静に対応し、効果的な解決策を見つけ出す能力が向上します。従って、問題や課題ばかりのベンチャー企業ではその経験値を多く積めて、密度も高いため、キャリアアップにつながると考えます。

ベンチャー企業での経験は、将来のキャリアにおいても大いに役立つことでしょう。

まとめ

いかがでしたか。

この記事では、私自身のバイオベンチャーでの経験を通じて、20代の若手がベンチャー企業に所属する価値について、大手企業との比較から探ってみました。

ベンチャー企業でのキャリアが将来的には非常に貴重な財産となることを強調したいと思います。

ベンチャー企業で働く最大の価値は、これを『財産』と捉えることができることだと思います。そのため、どのベンチャー企業やスタートアップを選ぶかを慎重に考え、見極めることが重要です。

一方で、現実にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。例えば、休暇が少なくワークライフバランスが崩れること、事業の成功や収益化までの待遇が厳しいこと、組織の統制が不十分でストレスがかかること、無理な経営計画が立てられることなどが挙げられます。

ベンチャー企業への転職を検討する場合、入社前に熟考し、覚悟を持つことが大切です。この挑戦には将来のキャリアに大いに貢献する機会が詰まっているため、思い切って飛び込むのも一つの選択肢です。私は自分自身の決断を後悔していないし、むしろ誇りに思っています。

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